会員企業紹介

株式会社鷹泉閣 岩松旅館

お見送り
住所 仙台市青葉区作並字元木16
電話番号 022-395-2211 FAX 022-395-2774
E-mail j-watanabe@iwamatu-ryokan,com URL http://www.iwamatu-ryokan.com/
営業時間 終日 定休日 年中無休
概要  「ご縁があってここに呼ばれましてね、十年かけて立て直しに努めてきました..」感慨深げに岩松旅館の渡邉二郎常務は語る。「これまでの暖簾に胡坐をかいていちゃだめだと、新しい発想で岩松社長と一緒に取り組んできました」。
 正面玄関の前につくられた池にはメダカが泳ぎ、ゲンジボタルもそろそろ飛ぶという。生きものたちが快適に暮らす空間=ビオトープをつくり、それを見ていただくのもお客様へのサービスの一つと考える、これも岩松旅館の新しい発想によるものなのだろう。
 「旅行会社に依存している体質や接客の仕方も改めようと、いろいろな改善案を実行に移しました」と渡邉常務。旅行会社の要求する条件を満たすため、団体客を優先してフリーのお客様を断らなければならないような従来からの取り引きの在り方を変え、古参の従業員の整理も敢えてそれを断行した。
「個人のお客様を大切にする新しい旅行スタイルの提案に力を入れたんです」。そのような考えからターゲットにしたのが女性客だった。ともすると「男の宿」というこれまでのイメージを払拭し、女性の一人旅を敬遠する傾向があった業界の古い体質にも敢えて挑戦した。そして生まれた企画が「全館レディースDay」だった。
 年に二回、男性客を泊めない女性だけの宿泊日を用意する。混浴の露天風呂も、男性用大浴場も、この日だけは女性専用となる。「初めは40名、二回目は120名、三回目には全館満室になったんですよ!」渡邉常務が楽しそうに笑う。
 「ピンクリボンDay」の発想もその延長線上で生まれた。乳がんの手術を受けた女性や治療中の女性だけを対象にしたユニークな企画がそれだ。わずか10名だけの申し込みだったが、敢えてそれを実行した。やって来た女性客が「もう一度ここに来たい」と、しみじみ言ったという。
 「広報活動にも力を入れましたね」と渡邉常務。岩松旅館のホームページを立ち上げ、インターネット上での情報発信に努めた。現在の宿の利用状況を見ると、ネット上で申し込みをするお客様が30%、営業活動で獲得するお客様が50%、残りの20%が旅行会社を通じてのお客様という割合になる。
 「従業員は現在80名。その中55名が正規の社員で、平均年齢は20歳です」と、渡邉常務が誇らしげに話す。毎年、一ヵ月をかけて求人のために東北各地の学校を回るのだという。「今年も15人採用しました。ええ、全て東北の高校を卒業した若者です」。聞けば、青森、秋田、岩手、山形の出身者が多く、これらの地域は忍耐強いのがその特徴だという。「三年は我慢するんだよ」と、多くの親がわが子を諭して外に出す。そのようにして新しい職場で働くようになった若者たちは、全員が、同じ東北出身の先輩や後輩と会社が設えた作並の寮で生活を共にしている。
 「核家族の家庭にはないものを彼らは持っていますね。祖父母の時代から受け継いできた習慣や家事が身についていて、それがここでの仕事にも活かされているような気がしますね」と、東京出身の渡邉常務は東北育ちの若者たちを評価する。「寮が完備しているので生活費があまり掛からないんですよ。家にきちんと仕送りしている子が多いのにも驚かされました」と、渡邉常務は感心する。社員教育も担当する渡邉常務は、「東北の若い人は、何を教えても素直に聞いてくれますね。そりゃ、時には厳しく叱ることもありますよ。でも、それは可愛さの裏返しだと思っているんです。そうでなければ人を育てることはできません」。渡邉常務はきっぱりと言った。
 「接客の時、たまにお国訛りが出るんですよ。だけどお客様の方がにっこりして、『がんばってね』って励ましてくれるんです」。このような、計算づくではない若い従業員の対応がまた、旅人に何かほっとしたものを与えてくれているのかもしれない。人が、人の優しさや他人とのつながりを感じるのもこのような時ではないだろうか。それがまた、旅の良さでもあるのだろう。
 いにしえの頃、傷ついた鷹が湯浴みしたところからその名が付いたという「鷹泉閣・岩松旅館」は、開湯二百年の時を経ていま、新しい旅のスタイルの提案と生活文化の向上に貢献する宿として日々精進をつづけている。(2014年6月20日更新)

従業員の佐藤さん

渡邉常務

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